世界的な炭素繊維の販売網と実績を持つ帝人株式会社と、迅速な市場対応力で世界のトップレベルのリサイクル炭素繊維量産設備の稼働を始めた富士加飾株式会社が業務提携し、リサイクル炭素繊維事業の原料調達から、商品製造に至る一貫事業を世界規模での展開を図る新しい試みである。
アメリカ式のベンチャーキャピタルは、新技術や新分野に多額の資金を投入しその結果、IPOを通じて、多額の資金を回収する。或いは、成長したベンチャービジネスを大企業の一部門として吸収するビジネスモデルが一般的である。
今回の提携は、大企業のマーケティングを身軽な中小企業が先行して行うものであり、補助金に頼らない自前の研究開発成果が、大企業に認められ業務提携につながった。
炭素繊維のリサイクル技術は大手炭素繊維メーカーをはじめとし、多くのベンチャー企業が多額の政府補助金を投入されており、開発した技術の出口を模索中である。炭素繊維の加工技術も大学を核とするコンポジットセンターにさらに政府から高額の設備投資資金を導入して、研究開発が進められているが、その主要な出口である自動車用途への実用化は未達成である。
富士加飾株式会社(Fuji Design :以下 FD)は、補助金を使わない自前の資金で新しい精密リサイクル熱処理技術を技術開発し、環境省の実証事業認定に合格し、2020年より量産設備の設置を始める傍ら、自社開発のリサイクル熱処理設備と中古の2軸押し出し機によるrCF強化コンパウンドの商品化に向けた市場開発を行ってきた。
市場開発の過程で、帝人株式会社(以下帝人)からもリサイクル案件が持ち込まれ、FDでコンパウンドまでの技術開発を実施した結果、帝人のリサイクル技術開発と並行してFDの量産設備によるリサイクル商品の市場開発を行うこととした。
FDでは、3名の最小メンバーで稼働させてきた量産設備に対し、大幅増員を行い2022年度より10名の体制でリサイクル工程からコンパウンドに至る工程を一貫して稼働させる。
帝人との業務提携は、自社マーケティングによる事業化推進に加え、帝人案件が加わり、FDの経営の安定化に大きく寄与する。
FDは、樹脂メーカー数社と共同開発契約を結び、CFRTP開発に必要な技術情報の提供を受け、商品開発を推進しており、射出成型用コンパウンドを主にスポーツ分野での商品開発を進めている。
FDで量産されるrCFの収束力の強さは、コンパウンド中の炭素繊維含有率を40-50%に高めることができ、曲げ弾性率をアルミ並みに向上させるため、アルミ代替の軽量化を目指すことが可能になる。
更に、加工技術において、炭素繊維不織布を開発し、コンポジットを次の市場開発テーマに上げて試作品のサンプル提供を始めている。
今後も、多様なリサイクル源に柔軟に対応し、種々の製品群を形成し、帝人と共に市場開発を推進する。
航空機メーカーよりFDに対し、新品と同レベルの強度を実現させるrCF技術に関する問い合わせが来ており、今後は連続繊維のrCF技術で航空機製造におけるCO2削減に寄与する方針で開発を進めている。