CFRP 水平リサイクル秘話 と題して、その背景をお話したいと思います。
そこで、今回は予告編として「 コンポジット開発屋の欲しい安価なリサイクルカーボンファイバーをもとめて 」についてお話しましょう。
なぜ、従業員2名と社長杉野守彦の合計3名の中小零細企業が、最先端のCFRTPコンポジットの開発を手掛けたのか?
巷では、数十億円の研究開発費が新しいコンポジットの開発に投入され、リサイクル技術の事業化に十数億円のファンドが組まれ、これまで航空宇宙にしか採用されなかった炭素繊維やリサイクル品が乗用車や身近の機器に採用が検討されており、技術の完成によって軽量化が進み燃費向上が図れ、CO2の大幅削減につながると注目されています。
ここまでは、新聞に紹介されており一般の常識です。金に糸目をつけない航空宇宙分野は、(手作りの)ハンドレイアップとオートクレーブで硬化させ成型品(航空機の機体や翼)を作るのが一般的で長年実績のあるこの方法は、相変わらず30%以上の端材を出しながら、製造方法は大きく変わらないでしょう。
今後、開発の主体は乗用車を代表とする分野が研究開発の舞台となり、これまでの研究開発や設備投資が華々しく?登場することになっています。
また中部経済産業局主催のプロジェクトでは100社を超える超大手企業が目標に向かって情報交換を行っています。
日本式の大手企業と下請け体質企業で構成される旗艦不在の連合艦隊です。 大手企業の研究者のEUを主体とする先進技術の紹介と、これに対抗する日本の開発陣の進捗報告がなされていると思います。
ここで大切なことは、次の通りです。
・EUの先進技術を本当に情報として取り込めているのか? 即ち、車中心の今後の開発目標やその結果が、競争相手でもある日本企業に公開されるのか?
・PP樹脂中心の日本の車開発文化がPA6,PA66主体樹脂主体の文化を取り入れられるのか? 航空機の高コストと乗用車は、異次元である。 リサイクルだから使えるというコスト感覚は通用しない。
EUは、国家予算のバックアップを貰いながらも民間主導で研究開発が行われその結果をシェアしています。 また、プロジェクト毎(実は分野毎)にまとめ役も存在しています。
以上のように愚痴を言い始めると際限なく続きますので次へ進みますと、通常の炭素繊維複合材の開発には、巨額の開発費と大型設備が必要。
NEDOの某課長曰く、「あなたのような企業の出る幕ではない」
この一言が杉野を奮い立たせました。
「補助金も情報も要りません。どこへ行けば、情報がいただけますか?」 「環境省でしょう。」
これが今回の新しい炭素繊維リサイクル事業の幕開けです。
リサイクル技術開発の特典は、予算を気にせず安価なRCFを使い、自由な発想を直ちに実験に移し、確認できる点です。
安い炭素繊維を得るために、中古機械を集めて改造し短期間で技術開発を完成させました。
大企業を定年退職し、豊富な知識と鍛えられた体力を持ち、人生100才と言われ戸惑っておられる技術者に、また、軽量化が叫ばれながら既存技術が出尽くしたと感じておられる現役技術者、先輩に負けない技術開発をしようと思っても予算をもらえない若手技術者に、世界に通用する技術が、2名の技術屋と平成連合艦隊の1%に満たない予算と中古設備のかき集めで開発できたことを知っていただきたいと思います。
辛口のこともお話ししてますが、世界で勝てなければ生き延びる道はないと考えます。
金メダルを目指して私達なりに戦ってきたCFRP水平リサイクル秘話を以下の章立てでご紹介します。
それでは次回をお楽しみに 、、、
第1章 新しいリサイクル法の発見
第2章 高速気流を用いた炭素繊維リサイクル開発
第3章 事業化に向けての実証事業受託(きっかけは、原料入手ルート)
第4章 事業化に向けての取り組み
第5章 今後の方向付け