1年以上Blogを書いておりませんが、どうしてもお伝えしたい潮目の変化があり、弊社にお付き合いいただいているお客様、弊社に関心を持っていただいている皆様にお伝えいたしたく、発信いたします。

4月最終週に開催されたJEC(Paris)において大きな変化に気が付きました。

JECに参加する多くの知人から、私がJECに参加しないのを知り、「今回はリサイクル技術の展示があると思いますよ。どうして見に行かないのですか?」という質問を頂きました。

「おそらく、名前を変えた、熱分解法と溶解法の繰り返ししか出ないでしょう」と冷めた返答をさせて頂いておりました。
JECに参加した知人から「ほとんどリサイクルは出ていないですよ」との速報があり、「ELGから独立したGen2社は?」と聞くと今回は出ていない由。

その他の情報を合わせて読み解くと、リサイクルブームはEU圏では沈静化したということだと理解しました。

弊社のHPにお問い合わせを頂く内容が、「リサイクル材料だから」という言葉をよく聞きますが、「リサイクルでは売れませんよ」とお応えしております。

リサイクルはあくまで「手段」であって、CO2発生を抑えて新品のレベルに戻すことが、世の中で求められている重要ポイントである。即ち、工程内で発生した端材、市場から回収された部材を、少ないCO2消費の工程で元の材料に戻すのが本来の目的であったことにEUの技術者は気が付き、あるいは求めていた目標が現実の要求となって定着を始めたということであります。

以前から申し上げているように、鉄もアルミニウムもリサイクルして元の材料に戻しています。鉄のLCAが2.3tonCO2/tonである理由にスクラップを溶融して混ぜ込むことが出来るからです。

EUでは、元のCFに戻せないリサイクル材が昨年まで頑張っておりましたが、市場の評価は甘くなかった様です。

エアバスグループのエアバスCTCという会社があり、日本に向けてリサイクル材が今後の技術開発のメインテーマであるとアピールし、日本から有名な権威者が高額の研究開発費を提供して教えを請いました。

弊社は、「そのようなものは既に開発済みですよ。」と実際にリサイクルカーボンファイバーをCTCに提供したところ、驚いて沈黙してしいました。

一方EUの指導的立場の技術者からは、「LCA値がどこまで下げうるのか?」
「どのような公的なオーソライズが出来ているのか?」「リサイクル後の性能は、新品と同等レベルに回復させることが出来るのか?」という質問を頂きます。

1.LCA値は、もとのCFの1/10の2.3tonCO2/CO2です。
毎年、環境省に指示された数式で算出し報告、承認を受けております。
2.rCFの性能は、新品の90~95%まで回復します。

更に次の答えを準備しております。
3.端材、市場から回収した部材、使用済みプリプレグは元の連続繊維のまま回収します。

実は、2022年5月2日にエアバスCTCのCEOにこの3点を説明したのが、1年を経過し、EUの新しい流れとなって今年のJECの潮目の変化として表れております。

日本の著名な先生方は、どのように説明されるのか?
恐らくしばらくの間は、沈黙を続けられるでしょう。
そしてEUが明確にこの方針を出してくると、ご説明されるものと思いますが、さかのぼって5年近く多大なエネルギーでリサイクルを追い求めた日本の技術者にリサイクルの本質を見抜けなかったことに猛省を促したいと思います。

弊社が、目標を見誤らなかったのは、環境省の指導の賜物で、5年以上前の実証事業を受託する際に、LCA値の目標を明示するよう指示を受けておりました。
また、実証中に、市場で評価を受け、市場に受け入れられる性能の技術開発をするように指導を受け、その結果として、市場は新品と同性能でないと受け入れてくれないということを学習し、それを実証結果に反映させました。
弊社が道を誤らなかったのは、環境省の将来を見据えた方向付けの賜物と感謝しております。

環境省では、今年度からリサイクルというあいまいな表現を控えて、

1.「未利用資源の資源化」という明確な表現が使われるようになり
2.デジタル化によるトレーサビリティーの手法を導入

以上2つの指導が明確化されております。

LCA値を極限まで下げ、性能を新品レベルに回復させた後は、「未利用資源を探し、トレーサビリティーを確認しつつ新品のCO2負荷を緩和する。」という次の環境省の方針を弊社の今後の開発の精神としたいと思います。

皆様方とEU,アメリカをリードする新しい潮流を作りたいと思います。
以上、最後までお読みいただきましてありがとうございました。

尚、弊社では量産化の体制を着実に進めており、昨年弊社に参加してくれた若者3名は、順調に成長しており、今年はさらに新戦力を3名以上募集いたします。
まもなくリクルートの内容も改訂し、若者と中堅の技術者を募集する予定でございます。

2023年5月5日 杉野記