リサイクル炭素繊維という切り口では将来の市場が見えない中での暗中模索が数年続いておりましたが、2025年は、これまで模索してきたリサイクル事業に方向性が見え、リサイクル事業からの脱皮の年でもありました。

精密乾留法で得られた炭素繊維は、アモルファスカーボン層で被覆された炭素繊維という新しい材料として認知を受け独り歩きを始めました。事前に粉砕せず、そのままの形で均一加熱によって取り出される炭素繊維は品質的にも新品炭素繊維と同等の評価を受け、製造工程から期限切れで排出される、炭素繊維クロス、UDシート、連続トウはそのまま新品炭素繊維の代替としての検討に加え、新しい材料、用途への挑戦が始まりました

リサイクル対象材料も、航空機等の製造工程端材の引き取りから、2分野の安定した供給源の目途がつき、以下のサステナブル事業を進めることが可能になりました。

安定供給源

1.燃料電池のエネルギーである水素は高圧貯蔵に耐えるため周囲を炭素繊維で強化したタンクに貯蔵されます。乗用車のタンクは、15年経過で使用期限が切れますが、精密乾留法処理により、連続繊維として取り出せ新品と変わらぬ機械的性能を保有しており、用途開発が進められています。

日本国内で検討を進めてきた自動車会社に新しく会社が加わり、国内すべての水素タンクを回収し、表面にアモルファスカーボンが被覆された炭素繊維として、新しい用途へ安定供給が可能となりました。

ヨーロッパにおいても、水素タンクを直接乾留する技術が無いため、水素エネルギーの実用化が産業分野に広く普及しているドイツの複数社から、業務委託の打診や検討依頼が来ております。

2.航空機の用廃機の内、ボーイング社のB787およびエアバス社のA350は、機体の50%以上にCFRPが使用されていますが、数年以内に退役を予定している機体が発生し、この数は年々増加します。通常のリサイクル法ではこれらを粉砕し、小片をリサイクルしますが、塗料、金属ファスナー、ガラス繊維、ハニカム、樹脂部品等を含む機体から、CFRPのみを分別し、炭素繊維で回収するのは不可能ですが、乾留法はCFRPとその他の異物の分別が可能であり、既に先行してB777の尾翼を入手し、分別回収後にリサイクル炭素繊維を用いた商品が市販されております。

以上のように、市場で使用期限切れや退役となったCFRP部材から新品と性能が変わらず、アモルファスカーボンで被覆された炭素繊維が市場へ還流を始めようとしており、富士加飾の精密乾留法が、その役割を担い始めました。

アモルファスカーボン被覆リサイクル炭素繊維は、新品炭素繊維に課せられたPCR(市場回収材料)としての解決法を提供するほか、表面処理法の付与により金属電気メッキや新しいC/Cコンポジット材料の開発が始まっております。

これらの用途開発を安定した供給の裏付けを得て、国内のみならず海外にもサステナブルサーキュラーを加速してして行きます。

大学、研究機関からのアプローチについて

冒頭に「新しい材料として独り歩きを始めた」と述べましたが、大学や研究機関から幾つかのアプローチをいただき始めました。

これまでのサンプル要求は、「他のリサイクルとの違いを見てみよう」という調査でありましたが、最近はこの材料を使った結果についての論文発表や研究会での発表であり、新しい特徴や現象を見つけ出そうという試みに変化しております。まるで我が子の才能が認められ、その特徴を伸ばすために研究を行っていただくようになったという、生みの親として大変有難く名誉に感じております。先生方や研究者に感謝とともに、成長盛りの新材料をお預けしております。

同志社大学の田中和人教授から、材料学会誌に論文発表していただきましたが、さらに突っ込んだ研究がなされるでしょう。また国内のみならず、海外の他の大学、研究所からの協力依頼があり、新材料としての期待が加速されるものと思い、気持ちを引き締めて、対応させていただきますので、国内、海外での成果にご注目ください。

展示会活動

今年も、国内と海外でテーマを絞り込んだ活動を行います。昨年は、国際フロンティア産業メッセ2025神戸に出展させていただき、新しい炭素繊維を支えて頂いている企業と共にその成果を報告しました。集まって頂いた新聞、調査会社の対応に、同志社大学の田中和人教授が長時間お付き合いいただき、アモルファスカーボンの炭素繊維への効果について、直接ご説明頂きました。

海外展示会は、エアテック2025アウグスブルグ(ドイツ)に出展しました。ヨーロッパにおける今後の展開は、① 用廃航空機からの長繊維の取り出し ➁ 水素タンクからの連続繊維の回収 の2テーマに絞り込み報告をするとともに、海外での事業パート募集を明確に打ち出しました。

2つの展示会はいずれの兵庫県のNIROのサポートによるもので感謝をしておりますと共に、兵庫県を中心とした新技術の発展 に微力ながら貢献したいと考えております。  認知が進みかけた新しい炭素繊維の進化にご期待ください。