コバトロン™ は、1990年前半に㈱神戸製鋼所新材料事業部 高分子材料部で開発された特殊ナイロンアロイを30%の炭素繊維で強化した薄肉軽量筐体用コンパウンドで、ノートパソコン用としてIBM(レノボ)、東芝、松下電器(パナソニック)の高級機種に採用され一世を風靡した画期的材料です。

 ソニーのディスクマン筐体としても5年以上のロングラン商品にも採用され、アルミニウム、マグネシウムの対抗馬として比重の軽さと薄肉成型性の金属代替樹脂材料として注目を集めた。

 神戸製鋼所の高分子材料事業撤退で、コバトロンは三菱エンジニアリングプラスチックス㈱に製造設備ごと事業移管されたが、その後ノートパソコンの爆発的な市場拡大で、コストが安く、成形が容易なPC-ABSに需要が移り、コバトロンの市場性は失われた。また、製造設備は協力工場の同和カルファイン㈱(現在のカルファイン㈱)に設置されたままになっていた。

 この製造設備は神戸製鋼所高分子材料部の当時の若手技術者が中古機を入手し、自らスクリュー、バレル、サイドフィーダーを長炭素繊維用に改造し、世界に1台の高性能2軸押出し機を完成したもので、これが鉄鋼メーカーでありながら樹脂メーカーが追随できない長炭素繊維強化樹脂を完成させた。

 当時、プロジェクトマネージャーであった杉野も若手に加わり現地に泊まり込んで製品開発を行った。

 リサイクル炭素繊維の開発にあたっては、開発品質をこの世界に1台しかない高性能2軸押出し機を念頭に置いて、炭素繊維のサイジングレベルをコントロールした結果、短期間で目標を達成することができた。

 この2軸押出し機の10倍の能力を持つ量産機の新設にあたり、炭素繊維の耐磨耗仕様の実績を持つ日本製鋼所㈱に発注した。担当の熱心な若手技術者のお陰で、スムースに量産設備が完成した。長炭素繊維用重量フィーダーは、すでに前述の実験設備で実証済であり、すべての量産設備は来年の事業開始を待つばかりとなっている。

 新しい2軸押出し機に充分な能力でリサイクル炭素繊維を供給する乾留設備は、もともと専門外である(といっても弊社独自の反応理論の乾留焼成炉は、理論の説明からスタートしたが)㈱AiKiリオテックに発注した。

 弊社の実験炉を運転し、物理化学の拡散理論であるFickの第1法則と説明し、細かい説明をしなかったが、AiKiの若手技術者は、「わかりました」の一言で、この世ではじめての新しい乾留設備を完成させた。1回目のオペレーションでOK! 完璧であった。

 30年前に生まれたコバトロンは、現在の若手技術者の新しいバージョンアップ設備で見事に生き返ります。

 コバトロンは、6ナイロン‐30%リサイクル炭素繊維(PA6-30rCF)からスタートしますが、PA6-40rCF、PA6-50rCFのメニューを加え、さらに9Tナイロン、LCP,PESと樹脂系を増やしリサイクル炭素繊維(rCF)があらゆる分野で使用できるように、試作設備と量産設備を駆使して、来年からの需要に応えるとともに新しい用途開発のお手伝いもできるよう関係者一同準備を進めております。

 コバトロンの命名についてお話します。(日本語と英語の混ざり合った言葉からの抜粋です)

 ウキノウ・アドンスト・ストロング・マテリアル

 生産能力 量産開始時 日量2トン 月産 40トン
      連続生産時 日量4トン 月産100トン 

 小ロット、特殊品は、実験機でも対応いたします。

 また神戸製鋼所より「コバトロン」ブランドの移管を受けた三菱エンジニアリングプラスシックス様からコバトロン商標の使用許可を頂き、商標登録申請中です。

 なおカルファイン様のご厚意で、2軸押出し機の譲渡を受けたことも併記させて頂きます。