第8章 総括

第8章 総括

今回の実証事業は、株式会社リーテムと、共同実施者として富士加飾株式会社が共同で
実施したものです。リサイクル炭素繊維の回収プロセスの検討に際し、多くの先発会社や、炭素繊維メーカー、大手自動車メーカー等の先発技術に対し、弱小な中小企業チームの挑戦であったが、先発技術を超える新しい実証ができたと自負している。

これを可能にしたのは、環境省の明確な現状分析に基づくご判断であり謝意を表したい。弊チームは、炭素繊維回収技術開発の狙いを、後工程の商品化とその市場の立ち位置から何を開発すれば新品炭素繊維を同じ市場で評価されるかを常に念頭に置き開発を続けた。

現状では、名古屋大学に委託し、単繊維の引張り強度が新品の80%以上の評価結果が出ており、さらに解析を続けていただいているが、引張り強度の評価はさらに100%に近づくであろうとのコメントをいただいている。さらに、コンパウンド品に加工した場合の機械試験結果では、新品炭素繊維使用と同レベルとなっている。

CFRTP は、連続繊維からの束状切断品を得る場合とプロセスに投入した後の短尺連続繊維から得る切断品が使用されているが、今回実証事業として確立した束状RCF は、コンパウンド用として一般的に使用されているこれら連続繊維の切断品から順次置き換え可能になるものと思われる。

RCF の価格は新品の1/2~1/3 になるため、今後はコンパウンド品の価格を改善することができるものと思われる。特に、30~60%のRCF を使用するコンポジットは、従来品に対し大幅なコスト低減が可能になり用途が広がる。

これらは、新品の連続繊維に市場に影響を与えると思われがちであるが、連続繊維を使用する工程から発生する端材(プリプレグ端材含む)は発生側が処理コストを負担する産業廃棄物として埋め立てや、セメント、鉄鋼溶解炉(電炉)で処理されているのに対し、本実証事業では有価物として回収する基本ポリシーで臨み、再利用による環境負荷の低減と合わせて、連続繊維加工メーカーへの負荷を減らしうるものとなる。

リサイクル容易な金属素材に対して、完全リサイクルシステムが組めず劣勢であった炭素繊維の素材としての地位の改善が可能となり、工程端材、原材料廃棄物を気にしない連続繊維の市場が開け、金属材料に対し圧倒的な軽量化による、CO2 低減を促進しうるものとなる。

原料回収面では、15 年経過し、使用済みとなったCFRP(CNG ボンベ)は、本実証事業の主テーマとして実行し、リサイクル源の調査から、製品回収、RCF 回収、束状切断、コンパウンド工程を経て、従来品と遜色がないという結果を実証したが、炭素繊維の安定性から今後さらに年数を経た航空機本体CFRP の回収も問題なく実施できるものと思われる。

今後の課題は、リサイクル炭素繊維とひとくくりに分類されている多様な回収材に対して、2 次加工以降のRCF 強化材の信頼性を向上させるための標準化が重要課題となる。本報告書には、多様なリサイクル源と大きく3 種類に分かれるリサイクル形状に対して、アウトプットの炭素繊維原糸の分類を表にまとめて対応付けており、今後は、リサイクル方法とその処理温度、処理雰囲気、抽出溶媒等の分類を加味することにより、RCF は、原材料としての市民権を得るものと思われる。