6.4 事業化に係る総合評価

6.4 事業化に係る総合評価

事業化に向けて、原料確保・回収、実規模での処理方法(CFRP 再生処理、RCF 切断・保管)の確立、RCF の製品化レシピの開発と、利用需要先からの評価、用途に応じた需要規模、一連のコスト把握などをもとに事業化に係るコスト評価を行い、実施可能性についての総合判断を行う。

6.4.1 検討の枠組み

事業化の検討は、実証事業で対象とした「ペレット製造システム」のみならず、自主開発を通じて構築してきた「押出材」、「不織布」の製造についても併せ持つ、総合的なサイクル事業化を対象に行うものとする。

なお、本格事業は、3 年後に計画することを考えているが、1 年目、2 年目はそれぞれ
下記のような対応を前提に、検討を行うものとする。

⚫ 事業化は、当面は、ペレット製造システムを推進するとともに、これまで自主開発を進めてきた押出材、不織布なども照準した総合的な枠組みで検討を行う。
⚫ 具体的には、次年度以降に、事業投資を行い、ペレット、押出材、不織布の用途ごとの更なる試作開発及び、需要先との具体的な連携を行い、原料ソース及び、成果物(製品)の品質目標の見極めを行う。
⚫ その後、量産試作を進め、需要先の確定の後、本格事業への移行を想定する。
⚫ 現在、既に、各方面から共同研究・検討の依頼が生じつつある状況にある。

6.4.2 事業スキームについて

事業スキームは、次図のように検討している。
⚫ 原料は、「使用済材」のみでなく、「成形端材」、「成形工程中発生端材(プリプレグ)」
など、多様な原料ソースを対象にそれぞれ精度の高い回収プログラムを標準化し、そのアウトプットを汎用グレード、T700、T800 に分離して回収する。
⚫ 全ての事業は、同列に対応することを意図するものではなく、量産試作を通じて、需要先との連携を見極め、準備の整ったものから製品化用途の拡大を図るといった手順を想定している。

なお、事業スキームに係る対応状況は、下記のようになっている。
⚫ 成型品端材、使用済回収品は、従来からリサイクル対象となっているが、今回はプリプレグにまで回収源を拡げ、回収条件を確立した。
⚫ それぞれの回収源は、大きく3 レベルの回収温度プログラムに類型できる。
⚫ プリプレグは、硬化処理の終わった成型品に対し、硬化温度での前処理が必要であるが、回収燃焼炉の中の温度処理プログラムの追加により、硬化品と同等の品質の確保を可能にした。
⚫ 発生源、発生形態に関わらず回収されたRCF は、T300 クラスの汎用グレードと、T700、T800 の高強度グレードに層別できる。コンパウンド製品レベルであれば、これらの3 つのグループへの層別と標準化で製品の品質は安定してくると考えられる。
⚫ これらの開発品については、引張強度とシャルピー衝撃値、及び曲げ強度、曲げ弾性率は、T300 とT700、T800 で、それぞれ特徴的な値を示すものと考えられる。
⚫ 現在、残存繊維長(加工後)を1~10 ㎜以上に長く保ち、Vf を40~60%まで増加させたLCP、PES マトリックスのCFRTP 板状押出材を開発中である。
⚫ 今回の開発過程でRCF の(リサイクル品ならではの)特徴を見出すことができた。今後は、RCF が新品材に対し、特徴的な物性を持ちうる製品群を見極め、用途開発
を推進する予定とする。

6.4.3 事業化の計画条件

① はじめに、ペレット製造システムの構築を考慮し、原料回収、回収分別、コンパウンドの一連の工程に要する総括原価の検討を行った。その結果をもとに、具体的な計画条件を見極め、損益分析や、キャッシュフロー分析を行うこととした。
② 計画の枠組みは、引き続き2 社が連携の上で計画条件を検討し、事業投資に当たっては環境省の事業補助(設備費1/2)を考慮の上で、事業化の検討を行った。

事業の採算性を評価するにあたり、次のベースケースをもとに検討を行う。

6.4.4 事業性の確保に向けた課題と、今後の取組目標の明確化

事業性の評価は、投資回収年数、税引き後利益単年度黒字化年数、内部収益率(IRR、4 年)の3 つの指標を用いた。なお、環境省補助金については、付与いただく前提で検討を行った。

① 評価指標のいずれも、良好な結果が得られた。特に、押出材、不織布は事業効率が高い。当面1~2 年は、樹脂メーカーと連携したペレット製品化を主体に計画するが、その後、より付加価値の高い押出材、不織布の市場化ができれば、売上50 億円超を見込める持続性の高い事業となる。押出材、不織布応用製品は、海外競争力が期待でき、さらに売上げを拡大したい。
② 原料回収の計画対象は、海外品の数量が多い。しかしながら、今後、量産化の成果が得られれば、国内の処分物(主に埋立、電炉処理等)からの切替えによる受入量の拡大に容易に結びつきうるものと考えられる。
③ ペレット製造化は、目標とした上市に近い成果を既に得ている。今後は、引き続き、ペレット➡押出材➡不織布などの需要・企業連携の見極めを行う前提で、当面は「量産試作」として位置付け、安定稼働が担いうる事業投資に移行する必要がある。
④ 事業の立ち上げには、需要家との製品品質をめぐる調整など時間を要する。そのため、初期投資をできるだけ抑制しつつ、安定的な設備導入と、借入抑制を図るため、環境省による設備費の1/2 補助金の取得は、事業の安定化に寄与する重要なテーマであると考える。