4.3 コンパウンド成形性の確認評価

4.3 コンパウンド成形性の確認評価

コンパウンド成形性の確認評価を行い、評価が得られたものについてはカタログの作成を行う。なお、評価のため、試験材の成形や、流動性等の試験金型の準備を行う。

4.3.1 ペレット性状

物性評価は、ダイセルポリマーに依頼して行った。ダイセルポリマーは、共通のPC-CF 系の量産経験がある。そのため、今回のコンパウンド製造ラインの工程能力を含めて試作品が商品として安定しているか等の評価を依頼した。評価試験は、成形分野でトップレベルの評価となる。試験概要及び、結果は、以下の通りとなっている。

①目的
PC/RCF 20%、 25%コンパウンド品の物性測定

②材料
富士加飾㈱ 試作品

③測定条件
【成形条件】
成形機:ファナックαS100iA (型締め力100t)
金型:ISO 多目的試験片金型
成形温度:300℃
金型温度:80℃
射出速度:25mm/sec
1 次圧/保圧:170MPa/45MPa
保圧時間/冷却時間:20sec/25sec
【試験内容】
試験規格と測定条件は別紙に記載。
引張り試験 :n 数=3
曲げ試験 :n 数=2
シャルピー衝撃:n 数=3
HDT(高荷重) :n 数=2

④測定結果
PC-20RCF、PC-25RCF のコンパウンド品の物性測定の結果を示す。
◼ PC-20~25CF 系は、16~18Gpa の曲げ弾性率を要求される。今回の試作品PC-5RCF
は17Gpa をクリアし、新品材に匹敵している。
◼ 引張強度、曲げ強度、シャルピー衝撃値は、新品品と同レベルで遜色ない。
※淀川ヒューテックには、データシートを送付し、機械的性能の事前評価について了解が得られた。その結果、現在は取引に係る見積段階に既に移行している。(別途、PC-25RCF のダンベル形状試作成形品を提供)

今後、事業化に向けては、需要先に併せた品質、性能の調整を考慮した製品開発と同
時に、SDS(安全データシート)、包装形態、包装単位(特に、RCF、コンパウンド品、不織布等)、価格などの整備が必要となる。

炭素材料学会の炭素繊維に関する研究開発テーマは、25㎜以上、できれば50㎜以上の長繊維を用いたコンポジットの開発としており、25㎜~50㎜RCFを用いた事業化は渇望されていると聞いている。

事業化の成否は、原料回収量、RCF 回収量をバランスよく市場に流通させることが必要であり、先発企業が苦戦している炭素繊維販売に頼らず、2 次加工あるいは、さらに川下分野を目指すことで、需要家とのマッチングがさらに進みうるものと考えている。

成果物がペレットという、一つの商品に依存するのは危険と判断し、12 月後半から、リサイクル炭素繊維の2 次加工技術についての検討を追加し、自主開発テーマとして押出材や不織布など種々の再製品化の試作や開発を行った。その結果、市場調査の段階から、RCF の商品開発ステージへステップアップすることが可能となった。

現状の評価は、下記のようになっている。

① 2 軸押出機により25 ㎜繊維長のRCF を板状に押し出したものは、マトリックス樹脂が
PC、PES、LCP のいずれも繊維の破損が少なく、将来プレス用構造材としての市場開発の展開が期待できる。現在、世界でトップクラスといわれているドイツのフラウンホ―ファー研究所より残存繊維長が長く、Vf(体積分率)も60%程度まで上げることができるため、海外マーケットでも優位性を以て事業展開しうると考えられる。

② RCF 湿式不織布は樹脂との濡れ性が良いことから樹脂含浸を行い、表面物性を付与することができた。不織布のみの販売では事業としての競争力がないため、さらに加工のレベルを上げRCF の特徴を生かした商品開発を行う。

③ 25 ㎜ RCF は、熱硬化性樹脂とのなじみもよく混錬品の押出、ロール成形が可能である。これらの物性と成形性を生かした用途開発を行う。それらの需要家の求める弾性率や、衝撃値、さらには流動性、表面性などで異なる。

④ 基本的には、リサイクル対象材発生会社に対し、リサイクルRCF の販売でなくコンパウンドペレット、プレス成型用押出板材(熱可塑タイプ、熱硬化タイプ)を選んでいただき共同開発ステージに持ち込み、商品開発品の納入により継続的な需給関係を構築する。なお、RCFの商品化について多くの可能性を見出しているが、多くのポテンシャルカスタマーに対し、試行錯誤の要素を含む開発から商品化については、一定期間の調整が必要となると考えている。