2.1 CFRPの回収可能性の検討

2.1 CFRPの回収可能性の検討

CFRPの代表的な利用品目として、CNGボンベ等(水素燃料ボンベ、医療系ボンベ含む)や、航空端材(プリプレグ端材含む)などの発生状況や、原料としての回収可能性の検討を行う。

2.1.1 CNGボンベ等

(1)CNG ボンベ

天然ガス自動車で使用されるボンベで、鋼製と、複合容器(金属ライナー製、プラスチックライナー製)に区分でき、CFRPは複合容器に利用されている。アルミ合金ででき
た継目なしの円筒を内筒とし、その外側をエポキシ樹脂に含浸したカーボン繊維を多層に巻き付けた構造となる。内部気圧は200気圧(20Mpa)程度となっている。

天然ガス自動車は、次世代自動車に位置付けられており、全体として2030年までに新車販売に占める割合を5割~7割とすることを目指すとされている。

CNGボンベの耐用年数は、15年となる。容器の廃棄は、残留ガスの適切な処理及び、容器のくず化などを行い処分することとされている。※くず化;容器を二つに切断する等、その後加工しても一度くず化された容器であることが容易に確認できるような処置を施すこと。

(2)水素燃料ボンベ

燃料電池自動車で使用されるボンベで、アルミ合金でできた継目なしの円筒を内筒とし、その外側をエポキシ樹脂に含浸したカーボン繊維を多層に巻き付けた構造で、車両に搭載されるほか、運搬時、貯蔵時などもボンベが活用される。

アルミは、水素を透過することや、内部圧力が高いなどのため、接着材、不透過膜、CFRP層(厚みある)などで製造されている。内部気圧は、350気圧(35Mpa)~700気圧(70Mpa)となり、CNGボンベの200気圧(20Mpa)と比べて非常に高い。

(3)一般複合容器

アルミ合金でできた継目なしの円筒を内筒とし、その外側をエポキシ樹脂に含浸したカーボン繊維(又はガラス繊維との混合)を薄く巻き付けた構造。

容量は、1~5ℓ、~30ℓ、~150ℓ、~300ℓに区分されるが、1~5ℓが85%、5~30ℓが14%程度となる。例えば、帝人のウルトレッサは、1987年からの販売実績で国内累計出荷本数40万本を超えるとされている。

(4)CNG ボンベ等の賦存量

CNG ボンベ等は、容器製造後、使用前の段階で、全て高圧ガス保安協会の容器検査を受ける必要がある。従って、容器型式ごとに、複合容器(鋼製以外)の検査数を把握し、賦存量として分析を行った。

⚫ 自動車用天然ガス車両の累計台数は、4.7 万台(2017 年度末)、全世界2300 万台の0.2%と少ない。

⚫ CNG ボンベ製造数は、統計データをもとに集計すると、8.7 万本(18 年累計;H12-H29)、6.1 万本(15 年累計;H15-H29)となっている(※耐用年数15 年)。このうち複合容器(鋼製以外)は、9 千本(15 年累計)全体の15%程度であり、鋼製5.2 万本85%)と比較して少ない。

⚫ CNG ボンベ(複合容器)の製造は、近年減少しており、平成29 年度には35 本と平成14年度のピーク時2,216 本の1.6%と少ない。ボンベの法定耐用年15 年を考慮すると、現在は、比較的多く排出しているとも考えられる。(今後は少なくなる)

⚫ 一方、最近は水素ボンベの数量増が見られ、H28 年度は1,038 本とCNG ボンベと逆転し、増加傾向にある。(但し、本格排出時期は5 年以上先)

⚫ CFRP 製のボンベ類には、CNG ボンベ(鋼製以外)、水素燃料ボンベ(CFRP 製)以外に一般複合容器が、100 万本(15 年累計)存在する。内容物は、酸素、窒素、空気等であり、主に消防用、医療用、家庭用などで使用されている。但し、大きさは、1~5ℓと極小規模のものや、5~30ℓと小規模のものがそれぞれ84 万本(83%)、16.7 万本(16%)で、この2 種類で99.6%を占める。

2.1.2 航空機端材の特性

(1)CFRP の利用

炭素材は、軽く・強く比重が1.8 前後、鉄の約4 分の1 と軽い材料で今後の金属材料を置き換える軽量化材料として注目されている。特長として、疲労せず、錆びず、化学的・熱的にも安定といった特性を有し、厳しい条件下でも長期的に安定した信頼性の高い材料である。

この航空機用の複合材として使用されるPAN 系炭素材を製造していのが日本の東レ、帝人、三菱ケミカル3 社で生産量は世界の70%とシェアは高く、航空機を始めとする炭素材の原料メーカーとしてのプレゼンスは非常に高い。

エアバスが使用するCFRP は、ボーイングと異なる。ボーイングでは胴体(前、後)に複合材が使用されていたが、エアバスでは、尾翼、周辺、エンジン回りが多い。

一方CFRP の用途開発については海外勢の後塵を拝しているが、その中でもBoeing 社向けに日本の重工メーカー各社が航空機の各部品を納品している。また欧州のAIRBUS社の本拠地はフランスであるが、帝人が欧州にてJamco 社を通じて部品を供給している。

Boeing 社が米国で主翼を自社製造し、また自社製造以外にもTriumphAerostructures や、日本の三菱重工業にも製造を委託している。

(2)航空機部品製造メーカーの端材

航空機部品メーカーは部品製造時に大量のCFRP 端材が出る。三菱重工業はBoeing 向けに主翼製造を担っているが、Boeing 以外にも子会社の三菱航空機/MRJ 向けも製造しており、国内企業としてはCFRP 端材量が最も多く同社の技報によると年間約1,000t が排出されている。

おそらくそのほとんどが未処理のまま埋立て等廃棄処分されていると見られ、一部が国内外のリサイクル業者に引き取られていると見られる。

航空機関連企業は機密情報もあるために情報源は限定されるが、㈲カワサキテクノリサーチによる関係者へのヒアリングの結果は、以下のように端材量が推定できるとした。航空関連企業の端材だけでも国内で年間約1,500t と推定され、その他をあわせると2,000t 弱になると推定している。